当院の歯周病への考え方

当院では、歯周病に対して治療や処置を何度も繰り返すのではなく、本当の意味での予防歯科を推奨していきます。
治療の必要性を無くしていく、これが歯周病ワクチンの意義になります。
これまでのサプリやケアをしっかりしていきましょう!のような、それだけに頼る予防法とも全く異なります。
ワクチンという新しい考え方で、歯周病あるいはそれに影響を受けるあらゆる疾患を無くしていきたい…それが当院の予防歯科の考え方です。
歯周病について

歯周病への飼い主様の関心というものは、やはり10年前と比べてかなり高まってきていると日々実感しています。
歯周病とは成犬、成猫の約8割がかかっていて、放置しておくと心臓・腎臓をはじめ、脳や呼吸器などあらゆる臓器に悪い影響を及ぼし、寿命を縮めてしまうかも…この程度の情報は知っておられる方も多いと思います。
では、歯周病を重度の感染症と認識されている方はどのくらいおられるでしょうか。
例えば、壁に黄色い鼻汁が飛び散るほどのひどい鼻炎、じゅくじゅく臭いを放ち、少し触れられても痛いほどの外耳炎、あるいは出血を伴うほどに赤くただれた体幹の皮膚炎。歯周病は、実はこれらと同等の重度感染症なのです。
口の中は常に唾液に守られているため、それほど重度に見えなくても、知らないうちに他臓器に影響を及ぼすレベルに感染症が進行していることも多々あります。
感染した細菌の影響により、歯肉の炎症であったり、歯槽骨(歯を支える顎の骨)の破壊が起こります。また中程度以上の歯周病では、血液によって細菌あるいは炎症物質、毒素が全身にまわり、急性に命を脅かす重篤な状態に陥るリスクも出てきます。
歯周病の原因菌について
口腔内には多くの種類の細菌が存在しますが、そのうち歯周病に関わる細菌は10種程度あり、その中でも最もたちが悪く歯周病の主な原因となるのが、Porphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス ジンジバリス) です。
この細菌は、犬、猫、そして人間の口腔内にも存在しますが…
- 特殊なタンパク分解酵素の産生により、歯肉を溶かす
- 直接細胞を傷つけ、歯肉の炎症を引き起こす
- 口腔内の免疫力を弱らせ、他のあらゆる口腔細菌を活発化させる
…など、とにかくたちが悪いわけです。要するにP.gingivalisは親玉として、他の口腔細菌を引き連れ、歯周病を進行させていく存在なのです。この菌が存在すると、歯周病の症状が5倍も進みやすくなるといわれています。
今回の歯周病ワクチンのターゲットは、このP.gingivalisになります。

ワクチンで親玉菌であるP.gingivalisを抑える事で、他のあらゆる口腔細菌の活性も抑える事ができます。
歯周病治療について

治療の話をすると、やはり抗生剤やスケーリングが主流となります。
無麻酔での歯石除去というのがありますが、これは歯表面の損傷、顎の骨折、あるいは肺炎、敗血症への移行など、あらゆるリスクがあり、日本小動物歯科研究会でも推奨されていません。
では、抗生剤の服用、あるいは麻酔下でのスケーリングですが、これらはとても良い治療法ではあります。しかし、何度も再発を繰り返すのが歯周病なのです。しっかりケアをされていても、また歯石が、口臭が…このような経験をされた方も多いでしょう。
そこで何度も抗生剤を使用したり、何度も麻酔をかけてスケーリングをしたり…これらの治療の反復には明らかに疑問符がつきます。
歯周病点眼ワクチンについて
当院では、歯周病点眼ワクチンを推奨しています。
1年に1回接種する混合ワクチンや狂犬病ワクチンと同じです。歯周病は感染症であり、前述の歯周病菌の親玉となるP.gingivalisが、感染、増殖するのを歯周病点眼ワクチンで抑え込むことが可能なので、そもそも歯周病が起こり得ない状態に近づけることになります。また、そうすることで口臭の減少、歯石に関しても付着しにくい口腔環境に近づけることができます。
ただし、歯石は菌の有無に関わらず付着しうるものであり、また口臭も他の口腔細菌の存在のため、これらの点を完全にゼロに抑えるのは難しいかもしれません。よって、日頃の口腔ケアが大事であるという事に変わりはありません。
幼少からの接種で、混合ワクチンや狂犬病ワクチンと同様に歯周病の予防になります。シニアなどすでに歯周病を発症しているケースでも、歯周病点眼ワクチンとスケーリングを組み合わせることで、歯周病あるいは口臭の再発予防になります。
また麻酔リスクなどでスケーリングが困難なケースでも、歯周病点眼ワクチン処置のみで歯周病治療としての効果が出ています。


下記は実際のお声です。
飼い主様の声
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F様 Nちゃん プードル5歳
車の窓を閉めてドライブに行くと口臭で車内が臭くなってましたが、歯周病予防の点眼で臭くなくなりました。
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T様 Nちゃん チワワ10歳
一回の点眼で、においがかなり無くなりました。
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H様 Bちゃん パグ14歳
歯石はいっぱい付いていますが、歯周病予防の点眼でにおいがマシになりました。
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K様 Bちゃん ダックス17歳
口も痛く、口臭もきつかったので、いつも抗生物質を処方してもらっていました。今度歯石を取ってもらう予定ですが、歯周病予防の点眼で取り敢えずにおいはだいぶ消えました。
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I様 Mちゃん チワワ18歳
においが少なくなったようで、歯茎の腫れもひき、歯ブラシも嫌がらなくなりました。
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T様 猫ちゃん
口内炎でステロイド注射を繰り返してました。注射をやめて歯周病予防の点眼をしましたが、口臭、よだれがマシになり、フードも食べてくれてます。
歯周病点眼ワクチンは動物にも飼い主様にも負担の少ない予防法です

当院では獣医免疫細胞療法研究会より、最新の歯周病抗原(病原)送達キット試薬を取り寄せ、これを歯周病点眼ワクチンと称して使用します。
歯周病菌(前述のP.gingivalis)を細かくしたものが、リポソームという目に見えない程のカプセルに封入されています。これを接種することで、この菌に対する抗体(武器)が多く産生され、歯周病の予防効果を発揮します。また、この菌の関与する全身の疾患に対しても治療効果が期待されます。
また注目すべきは、接種方法が点眼であることです。
手軽に接種でき、接種料金も低く抑えられるので、動物にも飼い主様にも負担の少ない予防法になります。
歯周病点眼ワクチンを定期的に接種する事により、免疫効果を維持します。4~6か月ごとに来院頂き、診察室で点眼させて頂きます。詳しくは下記スケジュールをご覧下さい。
猫の口内炎

犬と猫では微妙に口腔内の親玉となる細菌が違っていて、犬ではP.gingivalisですが、猫ではP.gulaeがメインとなります。
しかし、これらは同じPorphyromonas属であり、今回のP.gingivalisに対するワクチンが同属のP.gulaeにも効果を発揮することが確認されています。実際に口内炎の猫に対して歯周病ワクチンを点眼し、口臭と共に痛みが治まり、食欲が戻ったという症例が何件か報告されています。 ワンちゃん同様、幼猫での予防からシニアの治療まで対応可能です。
口内炎でステロイドが手放せない、あるいは使用できない猫ちゃん、口の痛みで食欲不振、よだれがひどい猫ちゃん、一度ご相談下さい。
※現在ステロイド投与中の場合、ワクチンの効果が減少する可能性があります。
点眼前に2週間の休薬が必要になりますので、ステロイド投与歴を獣医師にお伝え下さい。
歯周病点眼ワクチンの接種スケジュール



●歯周病チェック(細菌検査)
当院では歯周病チェックとして、単なる口臭チェック、歯石・歯垢チェックといったものとは異なり、歯周病原因菌の酵素活性というものを測定します。
口腔内細菌のうちで親玉となる菌(P.gingivalis)は前述の通り、特殊なタンパク分解酵素を産生し歯肉に悪影響を与えます。この酵素の活性を測定することで、実際に歯周病の原因となっている親玉菌がどれほど増殖して酵素を産生し、悪さをしているかを確認することができます。
歯垢を少しぬぐい取らせて頂いた後、10分ほどで細菌酵素活性を検出することができます。幼少を除き、初回の歯周病点眼ワクチン接種前に測定させて頂きます。
●ご注意点
- 歯周病点眼ワクチンはあくまでワクチンになりますので、他のワクチン接種とは1週間以上の間隔をあけて行います。
- 免疫効果の持続には、他のワクチンと同様に定期的な接種が不可欠です。歯周病点眼ワクチンは2回目が2週間後、それ以降は4~6ヶ月ごとの接種を推奨しています。
- 歯石は、歯周病菌の存在下では付着しやすくなりますが、菌の有無に関わらず付着しうるものでもあります。歯周病点眼ワクチン後も継続的なケアをお願いします。
- ステロイド投与(猫の口内炎etc.)により、歯周病点眼ワクチンによる効果が減少する可能性があります。点眼前に、2週間の休薬が必要となりますので、ステロイド投与歴を獣医師にお伝え下さい。
ケア紹介 ~ワクチン効果を最大限発揮するために~

歯周病点眼ワクチン、歯石のある子はスケーリングを同時に行うことで、歯周病の発症リスクをかなり抑えることが可能です。
しかし、口腔内の他の雑菌の存在、歯垢の付着などを考えると、やはり日頃のケアがとても大切な事であるのに変わりはありません。歯磨きができればベストなのですが、隅々までしっかり磨くとなるとなかなか難易度の高いものになります。
ここでは歯周病点眼ワクチンを接種されたワンちゃん、ネコちゃんに、よりワクチン効果を発揮して頂くためにお勧めできる、お手軽で簡単なケア方法のみをご紹介します。
●サプリメント【デンタルBio】

人気のデンタルバイオがパワーアップしました。口臭の出にくい人から発見された善玉菌K12や、口腔内の健康維持に役立つ善玉菌M18が配合されています。小粒で飲みやすく、粉末にしても大丈夫です。
●歯磨きガム

ガム、歯磨きおやつを噛むことで歯垢を除去します。また口腔内の健康を守る成分配合であるのがポイントです。毎日がベストですが、少なくとも歯垢が歯石になるといわれる3日に1度は噛むのがオススメです。ネコちゃん専用のものもあります。
●液体デンタルケア

毎日の飲み水に少量混ぜて与えるだけの簡単ケアです。歯磨きガムが噛めない子でもケアが可能です。
口腔内の衛生管理をサポートします。天然由来の成分で安心して続けられます。
歯周病点眼ワクチン接種記録カード

歯周病点眼ワクチンを接種されたワンちゃん、ネコちゃんには接種記録カードをお渡しします。
次回予定日も記入しますので、毎回接種時にお持ちください。
ブログ『歯周病ワクチンの輪』
点眼ワクチンの接種記録として『歯周病ワクチンの輪』を更新しております。
歯周病点眼ワクチンを受けて頂いた子達の写真や、ワクチン情報を発信しております。下記からご覧いただけます。
歯周病点眼ワクチンは、保険適用外となりますのでご了承下さい。ご興味のある方、ご相談希望の方はお気軽にお電話、ご来院下さい。
